馬刺しを食べるなら霜降り肉?霜降りの特徴からおいしい食べ方まで解説

馬刺しを食べるなら霜降り肉?霜降りの特徴からおいしい食べ方まで解説

馬刺しは専門店や和食店で食べるものというイメージでしたが近年は家庭でもお取り寄せで馬刺しが手軽に食べられるようになりました。馬刺しは生の馬肉を薄くスライスした料理つまり馬肉の刺身ですが馬刺しとして使う部位や肉質はさまざまです。その中で赤身と並んで人気が高いのが霜降り肉です。この記事では馬刺しの歴史から霜降り馬刺しの特徴おいしい食べ方まで解説します。 

馬刺しの始まり 

馬刺しとは生の馬肉を刺身として食べる料理ですが九州熊本の郷土料理です。郷土料理として馬刺しが食べられているのは熊本の他に東北や信州などいくつかありますが、最初に馬肉を広めたのは肥後熊本初代藩主「加藤清正」といわれています。その頃はまだ馬肉を生で食べる馬刺しはありませんでしたが馬肉と馬刺しの歴史を振り返ってみましょう。 

馬肉を広めた武将加藤清正 

日本で肉食が公然と許されるようになったのは明治以降です。それまでは牛や馬を食べることは禁じられていました。理由は仏教の教えもありましたが農耕や戦・移動などで人間の役に立ってくれる牛や馬の数を減らさないようにするためでもあったようです。 

そうした馬がなぜ熊本で食べられるようになったのか?それにはこんな逸話があります。 

1592年〜1598年文禄・慶長の役で豊臣秀吉が朝鮮出兵をした際、肥後熊本初代藩主加藤清正も大陸を渡りました。しかし苦戦を強いられた日本軍は食料も底をつき戦闘で死んだ軍馬をやむなく食料にすることにしたのです。そのとき滋養強壮に効くこととおいしさに気づいた加藤清正は熊本に戻り馬肉を広めたといわれています。 

また会津の戊辰戦争では負傷者に滋養強壮の薬として馬肉を食べさせたり怪我の治療のために馬肉を傷口に貼って治したりしたという説もあります。 

馬刺しの始まりは昭和30年以降から 

ただし生で食べる馬刺しの始まりはずっと後の昭和30年以降のことです。昭和40年代から食用馬が肥育されるようになったため肉質の改良が進み、馬刺しはそこから広がっていきました。 

馬肉の霜降りの特徴 

そんな馬肉ですが今回ご紹介する霜降りはすき焼きや焼肉でもおいしくいただけますが、なんといっても生でいただく馬刺しが最高です。 

まずは霜降りの意味と味・栄養面での特徴からみていきましょう。 

霜降りとは 

霜降りという言葉自体は地面や植物に霜が降りたような白い斑点模様のことをいいます。食肉における霜降りとは白い脂肪が赤い筋肉の間に網目状に入っている状態のことでこの脂肪を「サシ」といいます。サシが細かく入っているほど霜降りとしてのランクは高く脂がのったおいしい肉とされているのです。 

馬肉の霜降りはどこの部位? 

霜降りは一箇所からではなく腹側のバラや肩ロース、背中側のロースといった数箇所から取れますが、部位によってサシの入り方が異なります。下腹部側のバラにある霜降りは最も脂が多く大トロと呼ばれ腹部中央のバラにあるのが中トロです。いずれも1頭の馬からわずかしか取れない希少部位で産地・肥育方法によってもサシの入り方は異なります。 

味わい、におい、見た目の特徴 

馬肉の霜降りのおいしさはまず甘みがあることです。甘さの元は疲労回復に効果のあるグリコーゲンという物質で馬肉は牛肉の3.5倍もこのグリコーゲンを多く含んでいます。またコクがあるのにさっぱりしていることも大きな特徴です。 

脂はしつこさがなく口の中に入れると肉のコクと一体となって旨味に変わります。さっぱり食べられる理由は脂の融点が牛肉よりも低いため舌に乗せた瞬間に体温で溶け出し脂が口の中に残らないからです。食感は肉と脂が網目状に構成されているため赤身よりも柔らかさが際立ちます。 

馬肉を食べたことがない人は牛肉や豚肉に比べ臭みが強いのではないか?馬刺しなど生で食べると臭いがさらに強く感じるのではないか?と敬遠する人もいるかもしれません。しかし食用として肥育された馬肉はいわゆる獣臭さはまったくなく牛肉や豚肉よりも食べやすいという女性ファンも多くいます。もちろん生食でも臭みは感じません。 

また見た目の特徴としては馬肉は包丁を入れて肉が空気に触れるときれいなピンク色になることです。 

一説によると馬肉が桜肉と呼ばれるのはその色からともいわれていますが桜色の肉に脂の白色が霜降り模様になった姿は食卓を華やかに彩ってくれます。 

馬肉はヘルシー 

そんな霜降り肉ですが脂の多さを考えるとカロリーが気になるところです。しかし馬肉は牛肉に比べ全体的に脂質が低めで低カロリーという特徴があります。その上リノール酸やオレイン酸といった不飽和脂肪酸が多く含まれておりコレステロールを低下させる効果があったり、タンパク質や鉄分・カルシウムが豊富であったりと健康面でのメリットも多い食材なのです。 

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産地と品種による肉質の違い 

日本の馬肉の産地は熊本・福島・青森・長野などいくつかありますが生産量No.1はやはり熊本です。

馬肉は熊本のような国産種もありますが最近の需要の高まりも受けて海外から生体を輸入したり海外で食肉として加工されたものを輸入したりするケースもあります。また食肉用の馬といっても大きく分けると2種類あり味に違いがあります。 

そうした産地や品種について詳しく解説していきましょう。 

純粋な熊本産の馬刺しとは? 

純粋な国産の馬肉というのは日本で生まれた仔馬を日本で肥育・加工したものです。たとえば熊本県産の馬刺しを例に取ると熊本県で生まれた仔馬を1年半〜3年かけて肥育・出荷し、馬刺し用に加工されたものが「熊本県産馬刺し」と名乗ることができます。 

一方「熊本馬刺し」と表示されたものは、もともと海外や他県で生まれた仔馬を一定期間だけ熊本県で肥育し出荷・加工されたものです。また肥育されていた期間が一番長い場所で「〇〇県産」とか「国産」という表示が決められます。つまり最終的に日本で育ってもカナダで肥育された期間がそれより長ければカナダ産となり日本で育った期間の方が長ければ国産と表示されます。 

品種が同じで質の良い飼料と環境で育てればどちらもおいしくいただけますが、国産や熊本県産にこだわりがある人はこの基準を覚えておくとよいでしょう。 

品種と育て方で霜降りの有無が決まる 

現在日本で流通されている人気の馬肉は主に国産カナダ産です。国産の馬肉は旨みと柔らかさ、濃厚なコク、さっぱりとした品のよい口あたりが特徴でサシはきめ細かく毛細血管のように隅々まで行き渡っています。一方カナダ産は好みにもよりますが国産に比べると脂がかなり乗っていてさっぱりというよりも、ねっとり感が強く感じます。 

そうした産地による差もありますが味わいの違いはやはり品種肥育法の違いでしょう。 

食用馬の種類は大きく分けると軽種馬重種馬があります。軽種馬はサラブレッドやアラブ種など体重400kg~600kgの馬で日本では福島県が、外国ではポーランドやアルゼンチンなどが産地となっています。一方重種馬は体重800kg~1tもあるずんぐりした馬で品種はベルトン・ペルシャロンなどです。主な産地は熊本県とカナダです。

サシが特徴の霜降り肉は重種馬でつくられます。軽種馬は赤身がほとんどでサシはありません。これはもともとの品種の差もありますが飼料の違いも大きく影響しています。馬は草食動物ですが草だけ食べていても脂の多い霜降り肉にはなりません。そのため大麦・フスマ・トウモロコシといった穀類やエゴマなどを配合した特別な飼料を与えてサシの霜降り肉をつくっているのです。 

その他にもストレスを与えないような飼育環境をつくるなどおいしい霜降り馬刺しのために生産者は細心の注意を払って育てています。 

馬脂肪注入冷凍馬刺しとは? 

前述のように生産者の努力によってつくられる霜降り馬刺しですが1頭の馬から決して多くは取れない希少な部位です。そのため価格もどうしても高額になってしまいます。そこで手軽な価格で霜降りの味わいを楽しめるようにと登場したのが馬脂肪注入馬刺しです。 

馬脂肪注入馬刺しとはもともと霜降りではない赤身の馬肉に、加熱して液状にしたに馬の脂をたくさんの注射針のようなもので入れていきます。スライスすると見た目には天然の霜降りのような模様ができているのです。 

味わいや食感は天然の霜降り馬刺しに近くなりますが販売店や飲食店では必ず馬脂肪注入馬刺しでと表示することが義務づけられています。霜降り馬刺しを通販などで購入する際は天然の霜降りか馬脂肪注入馬刺しかよく確かめましょう。 

冷凍の霜降り馬刺しをおいしくいただく技 

その生体の特性から牛肉などに比べて細菌感染のリスクが極めて低い馬肉ですが2011年、厚生労働省の通達により馬刺しは流通過程ですべて冷凍することが義務付けられました。そのため通販の馬刺しも冷凍で送られてきます。冷凍の馬刺しをいかに上手に解凍するかがおいしさの決め手です。 

ここでは霜降りの馬刺しの解凍方法とおいしい食べ方を紹介します。 

解凍から盛り付けまでの手順 

まず大事なことは解凍し過ぎてドリップをできるだけ出さないことです。ドリップは冷凍した食材の細胞内にある氷が溶け出たもので、これがたくさん出てしまうと旨み成分も流れてしまいます。

そこでポイントは解凍し過ぎないことです。以下霜降り馬刺しの解凍と調理の手順を紹介します。 

STEP.1
冷凍の馬刺しを真空パックの封を切らず10分間氷水につける。
STEP.2
肉の表面が少し柔らかくなったら取り出す。
STEP.3
封を開き肉の繊維の目に逆らうように2〜3mmにスライスする。
STEP.4
オニオンスライスを添え、馬刺しを盛り付ける。

ポイント

・水ではなく氷水につける。 

・中心部はまだ凍った状態で氷水から引き上げる。 

・肉の繊維に沿って切ると歯触りが硬くになるので繊維と逆方向に包丁を入れ柔らかく仕上げる。 

霜降り馬刺しのおいしい食べ方 

馬刺しは一般的に甘口の醤油にニンニクや生姜を添えて食べることが多いのですが、霜降りならではの食べ方や調理法を覚えておくとさらにおいしくいただけます。ここでは冷凍馬刺しをご自宅で調理する際の注意点と、おいしく食べるポイントを紹介します。 

霜降りの基本の食べ方 

先述通り一般的に甘口の醤油にニンニクや生姜を添えて食べることが多いのですが、脂が多く甘味のある霜降りにはオニオンスライスを一緒に食べると味のアクセントになります。薬味は一般的にニンニクや生姜を使いますが、霜降りの場合口の中を爽やかにしてくれる生姜がぴったりです。 

時にはこんなアレンジメニューも 

通常の食べ方の他、大葉と生姜をのせた霜降り握り寿司や豪快な丼、卵黄とごま油を混ぜて食べるユッケ、またあっさりとサラダ風にしてもいいでしょう。霜降りは脂が多い濃厚な肉なので、合わせる食材や薬味を爽やかなものにするとさっぱりおいしくいただけます。 

まとめ 

今回ご紹介した霜降りは馬刺しの中では馬肉らしさをもっとも堪能できる部分かもしれません。コクがあるのにしつこくなく上品でとろけるような舌触りの馬刺しは通にも初心者にも満足できるお肉です。上手に解凍し、まずはオーソドックスに熊本特産の甘い醤油とニンニク・生姜で食べてみましょう。 

現在日本各地で馬刺しが食べられるようになったのは、400年前に熊本に馬肉文化を広めた肥後熊本初代藩主加藤清正のお陰かどうかはわかりませんが、時代を超えた普遍的なおいしさであることには間違いなさそうです。 

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